認知症と正しく向き合うための、5つの基礎知識

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人口の高齢化が問題視されている日本社会。認知症
その中で大きな課題ともなっているのが、
認知症患者数の増加です。

記憶力や判断力の低下など、
本人にとって不安が大きいのはもちろん、
周囲にとっても大きな負担が生じる認知症。
今や国を挙げての対策が進められています。

もし、自分や身近な人が認知症になってしまったらどうすれば良いのか―
認知症と正しく向き合うために知っておきたい基礎知識をまとめました。

目次

(1)認知症とは
(2)認知症患者数
(3)認知症の症状
  3-1中核症状
  3-2行動・心理症状
(4)認知症の原因
  4-1アルツハイマー型認知症
  4-2脳血管性認知症
(5)認知症の治療
  5-1薬物療法
  5-2リハビリテーション
  5-3介護、ケア
(6)まとめ

(1)認知症とは

認知症とは、何らかの原因によって脳の細胞が死んだり、
働きが悪くなったりすることによって記憶や判断力、実行力など様々な障害が生じ、
生活に支障が生じている(およそ6ヶ月以上継続)状態を言います。

加齢によって、物忘れが増えたり、判断力が低下したりということは
多くの人があてはまると思います。
このような物忘れと、認知症による記憶障害は異なるものです。
認知症では、体験の一部ではなく体験したこと自体を忘れていたり、忘れた自覚がなかったり、
そのために失くしたものを誰かが盗ったと思いこんだりなどの傾向があり、
普通の生活を送ることが困難になってしまうのが特徴的です。

近年では、軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)という
区分が設けられるようになりました。
MCIは、正常と認知症の中間の状態とも言え、記憶や理由づけ、実行などといった機能に
問題は生じているものの、日常生活には支障がない状態を指します。
MCIの方すべてが認知症になるとは限りませんが、
そのうち年間で約10~15%の人が認知症に移行するとも言われています。
このような区分が設けられた背景には、認知症の早期対策・治療に取り組むことにより、
進行を遅らせたり、発症自体を防いだりすることが重要であるという認識が
高まったということがあります。

(2)認知症患者数

厚生労働省によると、2012年時点での65歳以上の高齢者に占める認知症有病者数は、
約462万人(全体の15%)と推計されています。
また、認知症の前段階であるMCIの患者数は、全体の約13%、約400万人に上るとされています。
両者を合わせると、高齢者のおよそ4人に1人は認知症またはその予備軍となるわけです。

さらに2015年1月の厚生労働省による発表では、このままの状態が続けば、
2025年には認知症有病者が約700万人に上ると推計されています
およそ10年間で患者数が1.5倍に膨れ上がる計算になります。

高齢化が進む日本。
認知症対策は、国にとっての大きな課題にもなっています。

(3)認知症の症状

認知症の症状には、大きく分けて「中核症状」と「行動・心理症状」の2つがあります。

3-1中核症状

脳の働きの低下が直接的に影響して起こる症状で、以下のようなものがあります。

・記憶障害

脳の中の「海馬」と呼ばれる器官の働きが低下することにより、
新しいことを記憶する力が弱くなります。
さらに症状が進行すると、古い記憶を保存する力も衰え、以前の記憶も失われていきます。

・見当識障害

見当識、すなわち現在の年月や時刻、自分がいる場所などが把握できなくなります。
これによって迷子になってしまったり、対人関係に支障が生じたりします。

・理解、判断力の障害

認知症では、思考のスピードが遅くなる、二つ以上のことを処理できない、
予想外の出来事に混乱をきたすなどといったことが多くなります。
目に見えないメカニズムが理解できなくなり、
これまで使えていた自動販売機やATMが使いこなせなくなるとこともあります。

・実行機能障害

頭の中で計画を立てて実行することが難しくなります。
「○○を作ろう」と思って食材を購入しても家に帰ると忘れてしまい、
同じ食材を何度も買ってしまうなどといったことがあります。

・感情表現の変化

上に挙げたような障害のために周囲の状況が正しく解釈できなくなっているため、
突然怒り出すなど、思いがけない反応を示すことがあります。

3-2行動・心理症状

一方、本人が元々持っている性格や環境、人間関係などが絡み合うことにより、
“うつ”のような精神状態や行動面での問題が生じることがあります。
例えば、認知症であることを自覚し、元気がなくなり引っ込み思案になる人は多くいます。
物事をスムーズに行えなくなることで、自信をなくす、面倒になることもあります。
また、自立心が強い人、妄想的になりやすい素質を持った人の場合、
ものを失くした時に「誰かに盗られた」という考えに発展してしまうケースもあります。
そのほかにも、見当識障害から徘徊をするようになるなど、
行動・精神的な症状は家族にとっても大きな問題となり、
医療機関や福祉機関に相談するケースも増えてきます。

(4)認知症の原因

認知症の原因となる疾患は多岐に渡ります。
脳に障害が生じる疾患だけではなく、身体的な疾患によって認知症が生じることもあります。
その中でも、「アルツハイマー病」と「脳血管障害」の二つは
認知症の二大原因として知られており、これらだけで原因の8割ほどを占めるとも言われています。

4-1アルツハイマー型認知症

認知症の中でももっとも多いと言われるのが、このタイプです。
βアミノロイドやタウと呼ばれる特殊なたんぱくによって神経細胞が障害されることにより、
記憶障害に始まり、見当識障害、判断力の低下、さらに徘徊や妄想などといった
周辺症状も現れます。
男性よりも女性に多く、患者は増加傾向にあると言われます。
自覚症状はない場合が多いですが、少しずつ確実に進行します。

4-2脳血管性認知症

アルツハイマー型に次いで多いと言われるのが、このタイプです。
脳の血管が詰まることによって神経細胞の働きが低下、
あるいは死滅してしまうことによって認知症が起こります。
高血圧や糖尿病などといった生活習慣病に由来するものであり、男性に多いと言われます。
細胞の壊れた部分とそうでない部分とがあるため、
記憶障害はあっても判断力は正常であるなどといった
“まだら認知症”が起こりやすいのが特徴的です。
自分が認知症であると理解できる一方、
急に泣き出したり怒り出したりといった感情失禁やうつ状態が起こりやすいと言われています。
アルツハイマー型に比べて言語障害や歩行障害も起こりやすくなります。
また、アルツハイマー型では症状が確実に進行するのに対し、
段階的に良くなったり悪くなったりする傾向があります。

いずれの場合にも、認知症には老化と共に生活習慣が大きく関わっていると言われています。
認知症を予防するために、普段の生活では以下のようなことに気を付けましょう。

・バランスの良い食生活を心掛け、よく噛んで食べる
・運動を習慣づける
・読書や頭を使うゲームなどをする
・人と接する機会を作る
・ストレスを溜めないようにする
・睡眠時間を十分に取る(可能であれば昼寝の時間を作ると良い)

(5)認知症の治療

認知症の中には、早期発見・治療によって予防や完治が可能なものもあります。
例えば、正常圧水頭症や慢性硬膜化血腫といった脳外科疾患による認知症は
脳外科手術による治療が可能であるほか、
代謝性疾患や中毒性疾患、感染性疾患などによるものでも、
各疾患の治療によって認知症になるのを防ぐことも不可能ではありません。
しかし、アルツハイマー型認知症などといった多くのケースでは、
完全に治すということは現代医学では困難です。
ただし治療やケアによって進行を遅らせたり、症状の程度を低くしたりすることは可能です。

5-1薬物療法

認知症の初期段階では、薬物を用いることである程度進行を抑えることができると言われています。
しかしこれはアルツハイマー型認知症に対するものです。
脳血管障害に対する治療薬は多くありますが、
脳血管性認知症に対する薬剤は今のところありません。
また、精神症状の悪化に対しては向精神薬が用いられることがありますが、
使い方によっては症状が悪化するケースもあると言われており、慎重に進める必要があります。

5-2リハビリテーション

認知症になると、人と会うのが嫌になったり、
出歩くのが億劫になったりして閉じこもりがちになってしまう方も多いものですが、
こうなると精神機能がさらに衰え、症状が悪化してしまうことも少なくありません。
ですから、刺激を与えて脳を働かせることにより、症状の悪化を防ぐことが大切です。
簡単な計算や読み書き、音楽を聴く、友人に会うといったことが、認知症のリハビリになります。

5-3介護、ケア

認知症は「キュア(治療)よりもケア」と言われることもあるように、
家族や周囲の人たちによるケアが非常に重要なものになります。
認知症の方は記憶力や理解力などは低下していますが、
すべてができなくなってしまっているわけではなく、また感情面は非常に繊細になっています。
ですから、怒らず、焦らず、自然に温かくサポートをするということが求められます。
また、認知症は自覚のないものと思われがちですが、本人も自分自身の変化に気付き、
不安を感じながらも認めたくないと思っていることが多いのです。
周りの方はその異変を見逃さないように気を配りながら、医療機関の受診を勧めるなどして、
早期発見・治療に努めることも大切です。

とは言え、終わりのない認知症の介護は、周囲の方にとって心身の大きな負担になり、
体調を崩されるケースも少なくありません。
介護サービスなどを利用したり、地域の人に協力をお願いしたりして、
自分だけで抱え込まないようにすることも大切です。
また、介護者同士のネットワークを広げることで、
良い情報交換や、思いを打ち明けることができるようにもなります。

(6)まとめ

それでは最後に、認知症についてまとめておきたいと思います。

・認知症とは、脳の働きが低下することにより様々な障害が生じ、
日常生活に支障が生じている状態を言う

・65歳以上の高齢者のうち有病者は約462万人(2012年)で、
2025年には約700万人になると推計されている

・認知症の症状には、記憶力障害や判断力低下などの中核症状と、
性格や環境が関係する行動・心理症状とがある

・認知症の二大原因としてアルツハイマー病と脳血管障害が知られており、
いずれにも生活習慣が大きく関わっていると言われている

・早期発見・治療によって、一部の認知症では手術による完治が可能であるほか、
薬物などによって症状を抑えることもできる

・認知症では周りの方々によるケアが大切になるが、
介護サービスや介護者のネットワークを利用して、介護者の負担を軽減することも必要である

参考文献:

厚生労働省 みんなのメンタルヘルス 「認知症」
⇒ http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_recog.html
厚生労働省 「認知症への取り組み」
⇒ http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/dementia/
政府広報オンライン 「もし、家族や自分が認知症になったら 知っておきたい認知症のキホン」
⇒ http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201308/1.html
Yahoo!ヘルスケア 「認知症」
⇒ http://medical.yahoo.co.jp/katei/021119000/?disid=021119000

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